幾寅婦人会 会長 後藤 治子さん
映画『鉄道員(ぽっぽや)』の舞台として知られる南富良野町の幾寅駅。無人駅となった今も、この駅には全国から人が訪れます。駅前の花の手入れをして訪れる人を笑顔で迎え続ける婦人会の後藤さんに、南富良野での暮らしと、駅で出会った忘れられない人々についてお話を伺いました。
賑わっていた金山での学生時代と、南富良野へのUターン
― まず、後藤さんのご出身から教えてください。
後藤さん: 生まれは富良野ですが、育ったのは南富良野町の金山地区です。高校卒業後に札幌で4年近く会社勤めをして、結婚で幾寅に来たんです。
― 後藤さんが子どもの頃の金山は、どんな町だったんですか?
当時の金山は木材の町ですから営林署があって木工場もたくさんありました。ちょうど金山ダムの建設もあって賑わっていましたね。
中学校の同級生は2クラスで74名いました。南富良野に残っている同級生がいて、今でも和気あいあいと交流を深めています。
── 婦人会に入られたきっかけは何だったんですか?
後藤さん: 当時主人が消防署長になり、婦人会が「婦人防火クラブ」の会員になっていたことから、その繋がりで婦人会に加入しました。気がつけば、もう40年近く携わらせていただいてるんですよ。
幾寅駅の美化活動と、自然と始まった「おもてなし」
── 映画「鉄道員(ぽっぽや)」のロケ地、幾寅駅での美化活動などの取り組みは、どのような経緯で始まったのでしょうか?
後藤さん: 昭和51年に町で「美化運動」が始まり、たまたま幾寅婦人会が駅の周辺を担当することになったのがきっかけで、それ以来ずっと毎年続けてきているんです。先輩たちが受け継いできてくれたものを、大事にしたいなと思っています。毎年5月の連休前には駅舎の清掃をして、6月には中学生や高校生など地域の方々とも協力して花壇に花を植えています。そのあとは班を作って花壇の手入れを秋まで続けています。


婦人会が手入れをする幾寅駅の花壇
── 無人駅になった今も、たくさんの方が訪ねてこられるんですね。
後藤さん: そうなんです。駅でお花の手入れをしていると、映画のファンや鉄道ファンの方から声をかけられることが増えまして。ロケ当時のエピソードをお話ししたり、駅長さんの帽子を貸し出して記念撮影のお手伝いをしたりするうちに、自然と観光客への案内が私たちの日常の風景になっていきました。
駅が繋ぐ、全国からのお客様との出会い
── 全国から訪れる方との交流の中で、印象に残っている出会いはありますか。
後藤さん: たくさんあるんですが、横浜の方で、映画の主演の高倉健さんが亡くなった年に手作りのタペストリーを持って幾寅駅を訪れてくれた方がいました。私がそれを駅に飾っていたところ、数年後にその方が再訪されて「まだ置いてあったの!」と大変感激されて。それ以来交流が続いています。


ファンの方に送られたタペストリー
兵庫県のプロの写真家の方は、駅のいい写真をたくさん撮って送って届けてくださるんです。他にも全国の木造駅を巡って水彩画を描く方がいて、幾寅駅の絵を細かい解説付きで贈ってくださって。こういうのが届くと、嬉しくて皆さんに見ていただくんです。
台湾から自転車で来て、雨宿りに立ち寄った2人とは言葉は通じないんですけど、身振り手振りでなんとかやりとりして、今もLINEで片言の日本語ですけど繋がっているんです。もう何十人も、そうやって知り合いができて。全国からお手紙もいただくんですが宝物として残しています。

全国から幾寅駅舎宛の住所で今も届く郵便物
「癒される」という言葉が、一番の幸せ
── この活動をされていて、一番嬉しい瞬間はどんな時ですか?
後藤さん: 訪れたお客さんが駅に入ってきて「癒やされるね」「和むわ」と言ってくださる時ですね。映画のロケの時の話をしたり、ご家族の写真を撮ってあげたりして、喜んでくださっているなと感じた時が、やっぱり一番幸せです。


幾寅駅舎(映画で使われた「幌舞駅」の看板がかけられている) 駅舎周りの草取りをする後藤さん
― 後藤さん自身も、駅に来ることが楽しみになっているんですね。
後藤さん: うちで畑の草取りばっかりしていてもつまらないから、1日1回くらい用事のついでに来てますかね。色々な方と交流できて、外から来た人に「この町の良さ」を教えられて勉強になることも多いんです。ここにずっといると良さって意外とわからないじゃないですか。「知らないの?」って言われて「ああ、そうか」って。
南富良野の好きなところ
── 後藤さんは長く南富良野を見つめてこられましたが、この町の好きなところはどこですか?
後藤さん: 金山地区の高台から見る夕張岳が大好きです。とても力強くて立派な山なんですよ。反対側には十勝岳連峰も見えて、そういう雄大な景色を見ていると自然と「みんな頑張って暮らしてるんだよな」って思ったりして。
南富良野は夏は涼しくてホッとする場所ですし、冬の景色もまた格別なんですよ。ウィンタースポーツも盛んな町で私もカーリング、スキーを楽しんでいます。冬が待ち遠しいです。最近は海外の方も増えてきましたね。
それから、地域同士の交流も大事にしています。南富良野は地区が分かれているから、下金山地区の農家からもち米を買って敬老会で赤飯を提供したり、金山地区には以前あった福祉施設にボランティアに行ってました。落合地区の若い人たちも頑張っていますしね。
厳しい自然の土地ですが、これからも地域で皆さんと交流し合って活動していけたらと思っています。